犬から見た世界・レビュー



犬から見た世界


表紙

アレクサンドラ・ホロウィッツ(著)
¥2,625


犬に対する愛情に満ちあふれた良書です。
愛犬を見る目が確実に変わります。

犬の観察者にして、動物認知専門の心理学者の著者が、犬から見た世界がどうなっているのかを科学の眼で分析し、犬特有の知覚世界、犬の心、犬の匂いの世界、擬人化などの著者自身の研究だけではなく、最近の動物に関する研究成果や情報も紹介しています。

犬が自分について考えるかどうか。
犬が自分自身について何を知っているのか。
犬であるとはどのようなことなのか。
犬から見て世界がどうなっているのか。
何を嗅いで、何を見て、何を聞いているのか。
飼い主として非常に興味のある疑問や謎を、犬目線で掘り下げ、心理学の解釈を交えながら解き明かしていきます。

たとえば、彼らの匂いの世界。
匂いの視覚を持っている犬たちは、人間とは違う速度でものを見ていると著者は考えます。

 「強い匂いには新しさを、劣化した匂いには過去が見える。
  そして、これから向かう先の匂いが微風にのってやってくる。」

だから犬にとっての「いまこの瞬間」は、私たち人間がそれを知る前に起こっていると、著者は言います。
なるほど、可愛がってもらえる友人宅を訪ねるときなど、1ブロック先の交差点からクルマのなかで、突然、はしゃぎ始めるのも納得です。

犬が他の動物と決定的に違うのは、私たち人間とアイコンタクトがとれること。ならば、私たちも犬の内側をのぞき込み、「犬から見た世界」がどんなふうなのかを想像してみることが公平であるという著者の立場に共感を覚えます。

彼らは、私たちを見つめ、嗅ぐことで、私たちを知っています。ならば私たちも彼らをとことん見ることで彼らともっともっと親しく交わることができるというわけです。

今、私たちは、犬に服を着せ、シャンプーをして、誕生日を祝って、犬のなかの「動物」の部分を無視するようなことも珍しくはありません。このような極度の擬人化が、果たして犬たちとってほんとうに幸せなのか、真剣に考えなくてはなりません。

読後、うちの犬たちを見る目が確実に変わりました。

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